免疫力を高める腸活

新型コロナウイルスの感染予防のために、ウイルスを寄せ付けない、除菌・殺菌だけでなく、免疫力（ウイルスが入ってきたときに、体がウイルスと戦う力）を高めることが大切だということが最近注目されています。

免疫力を高めるためには、ストレスをためない、体を温める、良質な睡眠を取る、適度な運動をする、免疫力をアップする食べ物を食べる、などが必要だと言われています。

これらのことに気をつけることで、免疫細胞が活発になり、免疫力も高まりますが、腸を元気にすることもとても大切です。

 

最近、健康増進のために腸内環境を整えることで注目されている腸活は、免疫力アップと非常に深い関係があります。

今回は腸活と免疫力との関係についてです。

 

腸活とは？

腸内環境を整えて健康な体を手に入れることです。

もともとは、便秘や下痢の悩みを持つ人や、ダイエットや美容・美肌に関心がある女性たちから注目されるようになりました。

腸内環境を整えるには、腸内フローラを整えることが鍵となります。

 

腸内フローラ

腸内には、体内に棲む細菌の9割が棲みついています。種類は1000種類、100兆個にもおよび、お重さにすると1-2Kgにもなります。

細菌は種類ごとに群を成して、腸の壁にぎっしりと貼りついた状態になっていて、まるでお花畑（フローラ）のように見えることから、腸内フローラと呼ばれています。

腸内細菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つに大きく分類されます。善玉菌は文字通り良い菌で、発酵に関わり、悪玉菌は悪い菌で、腐敗に関わります。日和見菌はどちらにも属さず、優勢な方の見方をします。これらの菌は複雑にバランスをとっていますが、理想のバランスは、善玉菌2：悪玉菌1：日和見菌7　です。

善玉菌、悪玉菌、日和見菌の働きは次の通りです。

 

善玉菌

ビフィズス菌や乳酸菌で、腸内を酸性にすることで、悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にします。

 

悪玉菌

ウェルシュ菌やブドウ球菌などで、腸内で有害物質を作り出します。

 

日和見菌

善玉菌、悪玉菌のうち、菌の多い方と同じ働きをします。

 

腸内環境を整えるには、善玉菌を優勢にすることが大切です。

 

免疫細胞の7割は腸に集まっている

腸は、口から食べ物と一緒に入ってくる病原菌やウイルスなどの敵に常に曝されています。

そのため、細菌やウィルスなどの敵が侵入してきたときに戦ってくれる免疫細胞の7割が腸に集中し、免疫システムを形成しており、「腸管免疫」と呼ばれています。

腸内環境を整えて、善玉菌を優勢になると、免疫細胞が活性化し、病気から身を守ることができるのです。

そうすることで、新型コロナウイルスに感染しにくい体を作ることができます。

 

腸管免疫の主役パイエル板

パイエル板は、小腸の下の方の回腸や空腸に存在します。

腸の表面は食べ物を消化吸収するために絨毛という小さな突起が無数にありますが、その絨毛がない平坦な部分にパイエル板があり、パイエル板にはM細胞という病原菌を取り込む細胞が存在します。

病原菌が入ってくるとM細胞は病原菌を捉え、樹状細胞に受け渡します。次に樹状細胞は病原菌を分解してバラバラにし、T細胞に抗原として提示します。すると、T細胞はB細胞にIgAという抗体を作るように命令し、病原体などの異物を攻撃するようになります。

このように、パイエル板は免疫システムで重要な役割を果たしています。

腸内環境がよく、善玉菌が多いとこのIｇAは元気になるので、免疫力もアップすることになります。ですので、腸内環境を良くする腸活をすると、免疫力も高められるというわけです。

 

短鎖脂肪酸

最近話題になっている短鎖脂肪酸とは、腸内細菌による食物繊維の発酵により作られる酸のことで、酪酸・プロピオン酸・酢酸などの名前がよく聞かれます。

大腸上皮細胞のエネルギー源となり、大腸を酸性に保つため悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を改善したり、バリア機能を強化します。

肥満防止やカルシウム・マグネシウム・鉄などミネラルの吸収を高めると言われています。

 

良いことばかりに注目されている短鎖脂肪酸ですが、海外の研究では良い短鎖脂肪酸と悪い短鎖脂肪酸があるという報告もあるようです。

なんと、プロピオン酸には糖尿病を防ぐものと促進するものがあるそうです。

ご興味のある方は、AASJ（NPO法人　オール・アバウト・サイエンス・ジャパンの論文ウォッチ4月28日）をご覧ください。

 

 

 

 

☆次回は善玉菌を増やす方法です。